台東区立書道博物館企画展 | ![]() |
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中村不折 生誕150年記念展 [後編] 不折コレクションを中心に 平成28年9月9日(金)~12月16日(金) |
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第3期: 平成28年9月9日(金)~10月23日(日) 第4期:平成28年10月25日(火)~12月16日(金) |
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中村不折生誕150年記念展【後編】では、収集家としての中村不折に焦点をあてます。 不折の収集は、明治28年、正岡子規とともに日清戦争の従軍記者として清国へ赴いたことに始まります。画師として活動するはずでしたが、休戦状態となったため、約半年間、遼東半島や朝鮮各地を巡り、文物に触れる機会を得て大いに刺激を受けました。ここで不折は文字の魅力にとりつかれ、帰国後は文字に関するあらゆる資料を貪欲なまでに収集し続けます。それはいつしか1万点を優に超える膨大なコレクションへと発展していきました。独力で集めたコレクションを世に公開しようと、昭和11年に不折は自宅の庭に書道博物館を設立、初代館長となり書道界に大きく寄与しました。 今年は、不折が書道博物館を創設して80年を迎えます。不折が生涯にわたり集めたコレクションの粋を、収集した年代順にエピソードを交えて紹介します。 |
※文章、画像の転載は固く禁じます!
中村付設記念館
【1F 第1展示フロア- / 大型展示ケース】
◆ 第3~4期展示
番号 | 作品名 | 成立年代 |
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1 | 広開土王碑 | 高句麗(414) |
2 | 千福寺多宝塔碑 | 顔真卿(709~785)筆/唐・天宝11載(752) |
【展示ケース】
① 明治時代初期
幼少期の不折が絵本代わりに眺めていたのが浮世絵であった。「東海道五十三次冊」は不折が上京前に紛失してしまったが、のちに神田の古書店で偶然同じものを見つけ、うれしさのあまり購入したものである。
◆ 第3~4期展示3 | 東海道五十三次冊(保永堂版) | 歌川広重(初代/1797~1858)筆/江戸(19世紀) |
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4 | 江戸名所四十八景冊(蔦吉版) | 歌川広重(2代/1826~1869)筆/江戸(19世紀) |
不折は明治27年に正岡子規から新聞「小日本」の挿絵を任されて以降、親交を深めた。翌年には日清戦争の従軍記者として渡清し、その際に中国美術に触れたことを契機として書の資料の収集を開始した。
◆ 第3~4期展示5 | 繹山刻石―長安本― | 李斯(?~前208)筆/秦(前219) |
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6 | 龍門二十品 | 北魏(5~6世紀) |
7 | 集王聖教序(明拓) | 王羲之(303~361)筆/唐・咸亨3年(672) |
8 | 書譜―嘉靖本―(明拓) | 孫過庭(唐・7世紀)筆/唐・垂拱3年(687)) |
9 | 争坐位稿(南宋拓) | 顔真卿 筆/唐・広徳2年(764) |
10 | 草花図軸 | 渡辺崋山(1793~1841)筆/江戸(19世紀) |
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11 | 雁塔聖教序 | 褚遂良(596~658)筆/唐・永徽4年(653) |
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【2F 第2展示フロア-】
⑤ 明治40年代
留学を終えて帰国し、画家として、そして書家として活動していく。節約を心がけ、自作の書画作品を売ってその資金を書の資料収集にあてた。
◆ 第3~4期展示12 | 真草千字文(明拓) | 智永(陳~隋・7世紀頃)筆/隋(7世紀) |
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13 | 房彦謙碑 | 欧陽詢(557~641)筆/唐・貞観5年(631) |
14 | 書譜―天津本― | 孫過庭 筆/唐・垂拱3年(687) |
15 | 安陽四漢碑冊 | 後漢(2世紀) |
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16 | 張寿碑(出土初拓) | 後漢・建寧元年(168) |
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17 | 地黄湯帖 | 王献之(344~388)筆/東晋(4世紀) |
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⑥⑦ 大正時代初期
大正4年、不折は上根岸125番地(現在の台東区立書道博物館)に転居した。本業の洋画では文展(のち帝展)、そして太平洋画会展に作品を発表し、帝国美術院会員を務めた。書の研究と資料収集は本格化し、貴重な旧拓本、歴代名家の肉筆、さらには当時発見されて間もない敦煌文書なども収集している。
◆ 第3~4期展示18 | 爨宝子碑(出土初拓) | 東晋・義熙元年(405) |
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19 | 爨宝子碑 | 東晋・義熙元年(405) |
20 | 中嶽嵩高霊廟碑(宋拓) | 北魏・太安2年(456) |
21 | 停雲館帖(明拓) | 明・嘉靖39年(1560) |
22 | 十七帖―欠十七行本― | 王羲之 筆/東晋(4世紀) |
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23 | 法華経玄賛巻第七 | 唐・天宝12載(753) |
24 | 謝賜御書詩表巻 | 蔡襄(1012~1067)筆/北宋・皇祐5年(1053) |
25 | 大観帖(明拓) | 北宋・大観3年(1109) |
26 | 夏承碑(宋拓) | 後漢・建寧3年(170) |
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27 | 九成宮醴泉銘(宋拓) | 欧陽詢(557~641)筆/唐・貞観6年(632) |
28 | 妙法蓮華経玄賛第四函 | 唐(8世紀) |
29 | 山水図軸 | 米芾(1051~1107)筆/北宋・崇寧元年(1102) |
30 | 楷書題杞菊軒詩冊 | 虞集(1272~1348)筆/元(14世紀) |
【2F 特別展示室】
⑧ 大正10年代
大正11年、不折は正五位に叙せられる。翌年9月1日に関東大震災が起こるが根岸は被災を免れた。不折は自分が収集した資料を確実に守り、伝える方法を模索することとなる。
31 | 開通褒斜道刻石(最旧拓) | 後漢・永平9年(66) |
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32 | 広武将軍碑(最旧拓) | 五胡十六国(前秦)・建元4年(368) |
33 | 【重要文化財】宋版十誦尼律巻第四十六(開宝蔵) | 北宋・開宝7年(974) |
34 | 【重要文化財】荘子天運篇第十四 | 唐(8世紀) |
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35 | 【重要文化財】荘子知北遊篇第二十二 | 唐(8世紀) |
36 | 【重要文化財】鄭玄注本論語残巻 | 唐(8世紀頃) |
不折は大正時代の末に自邸内に当時最新の鉄筋コンクリートで収蔵庫を建てる。さらに昭和8年からは自身のコレクションを広く公開できる展示施設の建設を開始し、昭和11年11月3日に書道博物館が開館した。ここでは写真、当時のミュージアムグッズ、そして開館日からの庶務日誌などを展示している。来館者の芳名帳には、昭和10年5月に来日したフランスの東洋学者ポール・ペリオのサインも見える。
【2F 中村不折記念室】
⑩ 昭和
昭和に入ると、不折は太平洋美術学校の初代校長として後進の育成に尽力する。そして書道博物館創設後も精力的に収集を行い、研究成果を発表し続けた。
◆ 第3~4期展示37 | 史頌? | 西周(前9世紀) |
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38 | 西嶽華山廟碑―長垣本―(宋拓) | 後漢・延熹8年(165) |
39 | 八関斎会報徳記 | 顔真卿 筆/唐・大暦7年(772) |
40 | 淳化閣帖―夾雪本―(宋拓) | 北宋・淳化3年(992) |
41 | 汝帖(宋拓) | 北宋・大観3年(1109) |
42 | 鼎帖(南宋拓) | 南宋・紹興11年(1141) |
43 | 草書後赤壁賦冊 | 鮮于枢(1246~1302頃)筆/元・大徳4年(1300) |
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44 | 文皇哀冊(宋拓) | 褚遂良 筆/唐・貞観23年(649) |
45 | 蘭亭序―潁井本―(明拓) | 王羲之 筆/東晋・永和9年(353) |
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46 | 老子西昇経 | 褚遂良 筆/唐(7世紀) |
47 | 石鼓文―安国本―(宋拓) | 戦国(前5~前4世紀頃) |
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48 | 蘭亭序―韓珠船本―(宋拓) | 王羲之 筆/東晋・永和9年(353) |
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49 | 自書告身帖 | 顔真卿 筆/唐・建中元年(780) |
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⑪ 不折の洋画と不折コレクション
不折が収集した資料は、東洋の故事を主題とする自身の洋画作品にも見られる。
◆ 第3~4期展示50 | 博山炉 | 前漢・神爵元年(前61) |
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51 | 八万四千塔 | 五代十国(呉越)・顕徳2年(955) |
⑫ 不折が自ら装丁した拓本
◆ 第3~4期展示
52 | 高慶碑 | 北魏・正始5年(508) |
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42 | 龍門二十種 九種 | 北魏(5~6世紀) |
【中村不折 生誕150年記念展 後編】会期中のイベントのごあんない
ギャラリートーク日時 |
【ギャラリートーク】 平成28年10月9日(日) ⑥10:00~ ⑦13:30~ 【書道博物館 バースデーギャラリートーク】 平成28年11月3日(木・祝) ⑧10:00~ ⑨13:30~ (上記⑥~⑨のいずれかを選択してください) 11月3日の書道博物館バースデーに来館された方全員にプレゼントを贈呈いたします。 |
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定員 |
会場が手狭なため、事前申込制で各回20名程度となります。 応募人数により、開始時間を調整させて頂く場合があります。ご了承下さい。 |
申込方法 |
往復はがきの「往信用裏面」に、郵便番号、住所、氏名(ふりがな)、電話番号、年齢、希望日時を、「返信用表面」に郵便番号、住所、氏名を明記して下記までお申込下さい。 はがき1通につき1名・1回の申込となります。聴講無料。ただし当日の観覧料が必要です。 |
申込先 |
〒110-0003 台東区根岸2-10-4 台東区立書道博物館 ギャラリートーク係 |
締切 |
⑥ ⑦平成28年9月28日(水) 必着 ⑧ ⑨平成28年10月25日(火) 必着 |
ワークショップ「不折コレクションを書いてみよう!」
場所 | 台東区立書道博物館 新館(中村不折記念館)2階 会議室 |
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日時 | 平成28年10月9日(日) 平成28年11月3日(日) 上記の開館時間中随時行っていますが、16:15までに会議室にお入りください。 |
注意 | 事前申込は不要です。当日の観覧料のほか、参加費100円(材料費)が必要です。 |
書道博物館本館(東京都指定史跡)
書道博物館本館(第1・3・4・5展示室)では、玉器・陶器・瓦当・石碑・墓誌銘・仏像・甲骨文・青銅器・璽印など、日本および中国書法史上特に重要な金石類に見られる文字資料を常設展示しています。ここでは主な展示作品をご紹介します。
【第1展示室 1F 】石碑・墓表・仏像など、大型の作品に見られる文字資料を展示しています。
石 碑 |
題額・本文・台座をそなえる石。この様式でないものを刻石あるいは碣と呼ぶ。 隆命刻石(前漢/前3~1世紀) 冢土断碑(後漢・光和年間/178~183) |
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石 経 |
儒教の経典を刻んだ石。 三体石経(第三石)(三国(魏)・正始年間/240~248) 三体石経(第五石)(三国(魏)・正始年間/240~248) |
造像碑 |
仏像を彫刻した石碑。 高洛周等造像碑(北魏・正始元年/504) 功起君等造像碑(東魏・武定3年/545) |
墓 表 |
埋葬した墳墓の目印として地表に建てた石。 呂憲墓表(五胡十六国(後秦)・弘始4年/402) |
仏 像 |
故人の供養や来世の安穏などを祈願して作られた。第1展示室の仏像は大型のもの。 三尊仏石像(北魏・武泰元年/528) 阿弥陀仏坐像(唐・景雲2年/711) |
【第3展示室 1F】漢~唐時代の建築資材や、墳墓の副葬品などに見られる文字資料を展示しています。
玉 器 |
古代中国において特に尊ばれた宝石。装飾品や印などが作られ、儀式などに用いられた。 璧(殷/前16~?前11世紀) 琀(漢/前3~3世紀) 鎮圭 琬圭 玉戚 玦 玉魚(以上 周(前12(前11?)~前3世紀) |
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陶 文 | 陶器の破片に見られる文字を陶文という。印が押されたものや、刻まれた文字が見られる。 |
俑 |
土製の人形や馬、牛車などの模型。死後の世界で実体化し、死者を助けると信じられた。 牛車(漢/前3~3世紀) 婦人立像(唐/7~10世紀) 馬の塑像(唐/7~10世紀) など |
仏 像 |
第3展示室の仏像は、死者と共に墳墓に埋葬されたため、小型に制作されている。 菩薩半跏像(東魏・武定2年/544) 七仏像(隋・義寧元年/617) など |
鮑綦造塔記 |
(北魏・太平真君3年/442) 北魏時代最古の石刻資料。現存するのは台座のみ。 |
牌 | 札や遊戯などに用いられた。一字ずつ文字が刻まれている。これは明時代のもの。 |
塼 |
レンガに相当する。装飾的な文字や文様、画像などを施して建造物や墳墓の壁面などを飾った。 急就章塼(後漢)子供の文字学習用に作られた文章『急就章』の冒頭が見られる貴重な資料。 永元塼(後漢・永元6年/94) 永寧塼(後漢・永寧元年/120) など |
瓦当文 |
建物の屋根の軒先にある筒瓦の先端部分。ここに縁起の良い語句や紋様が装飾的に施されている。 饕餮文瓦当(春秋戦国) 瓦当「万歳冢当」(後漢) 瓦当「長楽未央」(後漢) など |
熹平石経残石 |
(漢・熹平年間/172~178) 儒教の経典を刻んだ石碑の作例としては最古。 |
墓 誌 |
故人の役職や業績などを刻み、棺とともに墓中に埋めた石・塼。 司馬昇墓誌銘(東魏・天平2年/535) 劉浩墓誌銘(唐) など |
【第4展示室 2F】古代中国で制作された青銅器に見られる文字資料などを展示しています。
青銅器 |
青銅で作られた古代中国の祭器。形によって名称は異なる。これらに見られる文字を金文という。
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武 器 |
実戦や祭祀で使用。 【重要美術品】戈(秦/前3世紀頃) など |
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墓 券 |
墓地を購入した権利書。細長い鉛の金属板に刻んだものや、肉筆のものがある。 延熹四年墓券(漢/前3~3世紀) 光和元年墓券(漢/前3~3世紀) など |
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板 碑 | 死者の供養、追善などの目的で建てられた塔婆(石塔)の一つ。板状であることからこの名がある。 |
【第5展示室 2F】甲骨文、鏡鑑、陶瓶、璽印、文房具、日本の文字資料などを展示しています。
甲骨文 | 現存最古の漢字資料。殷時代後期に行われた、亀の腹甲や牛の肩胛骨を用いた占いの記録。 |
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陶 瓶 |
土製の甕。漆による肉筆の文字が見られる。古代の日常的な文字の姿を示す重要な資料。 熹平元年十二月瓶(後漢・熹平元年/172) 【重要美術品】永寿二年三月瓶(後漢・永寿2年/1569) など |
鏡 鑑 |
鏡として、そして祭祀にも使用された。表面の装飾や文字に時代ごとの特徴がみられる。 【重要美術品】神獣鏡(三国(呉)・建興年間/252~253) 【重要美術品】獣首鏡(三国(魏)・甘露5年/260) など |
璽 印 | 官印(役所用)と、私印(個人用)の印章。明時代からは印をほる篆刻芸術が盛んになる。 |
墨 |
文房四宝の一つ。煤と膠(動物性たんぱく質)を練って型入れし、乾燥させたもの。 古墨 李文奎製(北宋・宣和年間/1119~1125) 青紫墨 程君房製(明・天啓元年/1621) など |
硯 |
文房四宝の一つで、墨をする道具。陶製のものや、石製のものがある。 陶硯(漢/前3~3世紀) 古温州石硯(唐/7~10世紀) 蘭亭硯(宋/10~13世紀) など |
経 筒 | 経巻を収納し、地中に埋めて供養するための容器。材質は銅、陶製などがある。 |
柄香爐 | 僧が手に持って献香するためのもの。 |
磬 | 上部二つの穴にひもを通して吊るし、打ち鳴らす仏具。鉄製や銅製が多い。 |
鰐 口 | 祈願のために鳴らす道具。鰐の口に似ているため、この名称がある。 |